KRトラブルシューティング 

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当トラブルシューティングは、メーカーから発行されている純正のサービスマニュアル(及びパーツリスト)記載の作業手順で行われる事を前提としており、説明補助の目的でサービスマニュアル(及びパーツリスト)の図表及び画像を転用しています。

 原則的に当HP上にあるデータのみを参考とせず、ご自分でマニュアル(初版第2刷以降)等を入手して作業を行ってください。

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ここでの呼称

一般名称

型式名

初期・初期KR・初期タンデム

KR250

KR250-A1

S型・S型KR・S型タンデム

KR250S

KR250-A2

1型・KR1

KR-1

KR250-B1

1S

KR-1S

KR250-C1/C2

1R

KR-1R

KR250-D1/D2

 

 

INDEX

【最初にお読み下さい】KRトラブル総論
初期型(KR250A)の欠点と対策法
S型(KR250S)の欠点と対処法
1系(KR1・KR1/S・KR1/R)の欠点と対処法

【初期・S型】オーナーとしての対策

【初期・S型】クランク(大端部)ベアリング及びスペーサの破損
[初出:KROG会報『私立KR学園』4号掲載、2000年5月改訂]

【初期・S型】クランク同調不良
[初出:KROG会報『私立KR学園』5号掲載、2000年5月改訂]

【初期】(入手→即実施)焼付き・クランクトラブルの元凶!対策後キャブレターの相異点
[初出:KROG会報『私立KR学園』5号掲載、2000年5月改訂]

【初期・S型】エンジンケース、クランク内へのオイル混入
[初出:KROG会報『私立KR大学』6号掲載、2000年5月改訂]

【初期・S型】ミッションオイル漏れ(各所)
[初出:KROG会報『私立KR大学』6号掲載、2000年5月改訂]

【初期・S型】負圧FUEL(燃料)コック不良(流用情報追加あり)
[初出:KROG会報7號『季刊ブルーハワイ金時』掲載、2000年5月改訂]

【初期・S型】(入手→即実施)1速でブン回すと失火!?サイドスタンドsw誤作動
[初出:KR.Promotion.VTR『PASSENGER・・・』取扱説明書掲載、2000年5月改訂]

【KR1・1S・1R】ミッションカセットが抜けない!

【初期・S型】(入手→即実施)バッテリーケースのボルトについて

【初期・S型】(入手→即実施)カウルの各ボルト取り付け部の劣化、ヒビ、割れを防ぐ

【全形式】始動不能・始動不良時に考えられる原因

【初期・S型】(情報求ム!)タコメータの故障

【初期・S型】Fホイールハヴ近辺からの鳴くような音

【初期・S型】KR長期保存の極意

【初期・S型】タンデムツインエンジン脱着の極意

【全形式】KRに触る前に必ず読め! 整備ミス事例

【初期・S型】タンデムツインエンジンの脱着について

【初期・S型】フロントホイール取付時の注意

【初期・S型】(入手→即実施)燃料計コネクタの焼失

【初期・S型】車体に取付けたままキャブレターを分解する時の注意

【全般】キャブレター分解時、フロートピンを抜こうとして…

【全般】キャブレター分解時、スロットルバルブ(及びワイヤ)の注意

【全般】キャブレターセッティング時の注意

【全形式】KRトラブルFAQ

【全形式】(部品を受け取る前に)部品注文に際しての注意

【全形式】KR質問コーナー

 


初期KRトラブル総論 KRシリーズの・ウイークポイント

文責:KROG会長・RED-WINGS

 

 まず車体を入手されましたら、ここからお読みいただきたいと思います。KRのトラブルは特殊なだけでなく、中には一つのトラブルがもう一つのトラブルを引き起こすきっかけともなり得ます。KRのトラブルを理解するにはまずその全貌を掴まなくてはなりません。まず総論を読んだ上で、目次にある各項目をトラブル対策に役立てて下さい。

 また、当トラブルシューティングに掲載されていない、KRであるが故のトラブルについて情報、質問がありましたら発生中でも事後でも構いません、ぜひともこちらまで情報をお寄せ下さい。当KROGにて内容を調査し、場合によっては当ページにて発表させて戴きます。

 尚、この総論は、雑誌『2ストローク・クレイジー』誌発行の際にKROGとして協力したコメントを大幅に加筆・訂正したものです。

 

初期型(KR250A)の欠点

 多数ありますが(笑)、まずは何をおいても初期KR独自のエンジン設計”タンデムツイン”によるトラブルの多発でしょうか。エンジンの横幅スリム化、重心の集中化、”当時のライバル車と比較して”中・高回転でのトルクバンドの広さ…が得られた点として挙げられますが、その他はクランクシャフト二本によるエンジン重量の肥大、レスポンスの悪化、低回転でのトルク不足、低回転での相互クランクの同調不良、クランクベアリングへ加わる負担増加、シリンダーの焼付き易さ等、失われた点の方が遙かに大きな割合を占めています。

 実にワークスKR直系エンジンとして鳴り物入りで期待の高まる市場へ投入された市販KRでしたが、発売当時から前後クランクの同調不良と電装系不良による失火が相次ぎ、一気に各メーカーレプリカ車とのライバル競争から蹴落とされた形となりました。その余韻のところ大きく、並列ツインのエンジン方式となったKR1を発売した頃には時代は既にV型へと移行しつつあり、総じてカワサキ2サイクルは時代遅れの一途を辿っていく結果に至ったのです。

 レーサーで成功したタンデムツインが何故市販KRで失敗したかについては、レーサーの前後シリンダ同時爆発を振動軽減の理由で交互爆発式とした事に起因します。結果、市販KRにはレーサーにあるまじき”カムダンパ”と呼ばれる前後シリンダの交互爆発を同調させる機構が必要となり、それがありとあらゆるトラブルの発生源となりました。

 加えて市販KRの普及しなかった理由は、メーカーのサービスマニュアル記載変更が一部のカワサキ系列販売店以外に伝わっていなかった点にも挙げられます。一例としてカムダンパ調整値と前後キャブレターの同調調整方法がありますが、改訂を知らされなかった多くの販売店はクランク同調不良(発進不能)・シリンダの焼付きで何度も戻ってくるKRをひたすら旧マニュアル記載の調整方法を信じて直し続け、結果いつまで経っても同じトラブルを繰り返し発生させ、諦めた(修理代の尽きた)ユーザーが手放してしまうかそうでなければついにエンジンを壊してしまう、といった悪循環を生み出しました。

 右に挙げたエンジンの根本的な問題に加え、独自のサスペンション方式による部品問題・FRPではない対衝撃性樹脂を起用した為に外装の重量化と経年変化による劣化(ひび割れ、欠け)、昨今のこれら純正部品不足(メーカー側税金対策による在庫処分に起因しており、特殊部品の塊とも言えるKRの部品欠品たるや今や最悪の状況をむかえています)等、欠点は多数存在します。

 

対策法

一部電装系の配線を短絡させる

●記載変更後のマニュアルを参考にカムダンパ調整及びキャブレタ同調調整を行う

クランクベアリング損傷を防ぐために長時間(数秒以上)の全開最高速「維持」走行は行わない(峠・サーキット走行の直線区間程度の全開維持であれば問題ないと思われる)

外装のボルトとカウル取付穴の間にゴムブッシュか樹脂製のワッシャを入れる

 部品欠品については一部簡単な加工で出来る物については当KROGで独自の生産を検討していますが、リンク機構の変更でも解決しない逆圧縮のサスペンション等、手に負えない部品が多いのも現状です。

 

KR250Sの欠点と対処法

 基本的にはサスペンション等、初期タンデムと同様の問題を抱えていますが、キャブレターの同調及びカムダンパ機構に関しては大きな改善を受けました。

 S型固有の大きな違いは上記と電気作動の排気バルヴシステムですので、強いてS型特有のトラブルがあるとすればその排気バルヴシステム(KVSS)の電気的な(年式的な)トラブルのみです。このトラブルの発生率は同年式他車種の電装系トラブルと同等の頻度と思われます。

 但しこのKVSSシステムで動作するサーボモーターについては2000.4月現在で在庫が確認出来ていますが、部品単位とは思えない程価格が高騰しています。

 

KR1・KR1/S・KR1/Rのトラブル総論

 車両が少ない事とパラレルツイン(エンジン)化されてから驚くほどトラブルが少なくなった(現在の2stにおける一般的なトラブルしか起きなくなった)事情で、現在のところさほど情報は集まっていません。むしろ2stにしては丈夫と言えます。

 当KROGの顧問の乗る車両がKR-1ですが、70000キロ走るまでエンジントップもクランクも無交換でした。現在はオーバーホールを終え80000キロも突破、車体自体の寿命記録を更新し続けています。

 尚、レースユースでの話ですが、F3仕様で酷使した結果、クランクが捻れてしまった、というトラブルが一件聞けました。

 一般ユースでは、KR1系以降採用のカセット式ミッション(脱着容易)の取り外す回数が多いと、クランクのミッションケース取付部を傷め、ミッションオイル漏れ等の症状を起こします。

 この問題に関してはKR1/S及びR、KR1の後期生産ロットからミッションケース取付ボルトの本数が増えて、多少は対策されておりますが、対策前のモデルも後のモデルも、なるべくミッションケース脱着の回数は減らすべく努力しましょう。

 尚、意外にもKR-1系は市場車両の少なさからか、メーカー純正部品の欠品が初期タンデムより目立ちます。とくに純正サイレンサー等、消耗品の欠品が問題となっています。

 それから、KIPS(電子制御可変排気バルブ)の動作不良やモーター故障・全開固定・全閉固定・劣化によるロッド折損・固着等の話が多数聞かれますが、これはKR-1固有のトラブルではない為、KDXやKMXに採用されているKIPSとトラブル個所・頻度・対応策と同様に考えて良いようです。

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【初期・S】クランク(大端部)ベアリング及びスペーサの破損
[初出:KROG会報『私立KR学園』4号掲載、2000年5月改訂]

 

 走行中(高速・高回転)、突然、焼き付きの様な感覚と共に減速もしくはエンジンのロック、一端停めてキックをかけようとすると、キックが時々何かに引っかかるような感覚で降りなくなる。(焼き付きであれば、重いか圧縮が無いか)もしくは完全に引っかかる、そしてエンジンを開けてびっくり、ヘッドにピストンが当たり燃焼室は傷だらけ、クランクケースの中に鉄のちぎりカスの様なモノがいっぱい・・・・

 

【原因】

 このトラブルは、クランクシャフトとコンロッド大端部が繋がる部分にあるベアリングとその両側にあるスラストワッシャが破損した為に、起こってしまうものです。

 KRの場合(KRでなくとも)これをやってしまうと、クランクシャフトASSYを分解して大端部ベアリングを取り替えなくてはいけないばかりか、ベアリング及びスペーサの潰れたなれの果てである鉄のカスを取り除く為にクランク室内部の大掃除をしなければならず、最悪、鉄カスがクランク内のメタルやロータリーディスク等に噛み込んでしまいエンジンそのものが使えなくなるという、心臓部だけに一番厄介なトラブルと言えます。

 原因は単純にベアリングが設計に対して弱いことにあります。

 そもそもこの問題はKRに限ることなく、同世代の2サイクル車全般に言える事ではないでしょうか。ことに、各メーカーが2ストレプリカの開発に未熟成の新技術を盛り込んでしのぎを削り合った時代でもありました。この中にあってタンデムツインエンジンを採用したカワサキKRは同世代の2スト車に比べてベアリングにかかる負荷が一番大きいと考えられます。というのは、クランクシャフトが2本ある為の重さやその前後クランクの相互爆発による衝撃・ジャダはベアリングの寿命を縮めますし、また同エンジン特有のトラブル、カム(ダンパ)の劣化(『クランク同調不良』参照)による同調不良やキャブレター未対策(『対策前キャブレターの相異点』参照)や他の原因による焼付き歴などがあればピストンがロックされた時のそれらも負担として蓄積され続け、また普段の乗り方(後述)や使用エンジンオイル(後述)もベアリングの寿命に影響するからです。

 参考までに同じタンデムツインでもS型はキャブやカム(ダンパ)関連の各部品が対策されているので、従ってベアリングにかかる負担は少なく、A型ほどトラブルに見舞われにくくなっている様です。

【対策】

優先的にキャブレタ対策及びクランク同調不良対策をして下さい。それらをクリアした上で乗り方等の注意を守ればクランクベアリング本来の耐久性が発揮され、破損等のトラブルを少なくできます。

 

キャブレター及びクランク同調不良の対策

詳細は『対策前キャブレターの相異点』『クランク同調不良』で述べてありますので参考にして下さい。

 

乗り方に気を配る

 端的に言いますと、初期KRは130km/h以上〜最高速で走るとベアリングのトラブルを引き起こします。特に高回転で最高速度を維持するといった乗り方は確実に壊れます。

 キヤブレタ対策をしているか、過去に焼き付き歴があるか、クランクベアリングにこれまでどれだけ負担が掛かってきたかにより差異はあるものの、20秒以上の最高速度維持はこのトラブルの直接の原因となりますので絶対にやめて下さい。逆に、峠やサーキットではそれほど長い時間の最高速維持はないので別の原因でもない限り壊れることはないでしょう。故にか、KRでサーキットを走られている方からはこのようなトラブルはあまり聞きません。そもそも2ストは最高速全開をいつまでも維持する乗り方をしてはいけないように思います。

 何かの事情で最高速やそれに近い高速までエンジンを回してしまった場合は、ベアリングの潰れないうちに減速に努めてください。

 その際、スロットルを戻す時にクラッチを切って中回転で空吹かししつつ滑走して速度を落とす様にして下さい。出来るだけ高回転時クランク内の混合気を絶やさない為ですが、以下にその根拠を記します。

 まず2サイクルエンジンは4サイクルエンジンに比べて圧縮圧力が低く、スロットルを戻すと発生するバックトルクに対しての耐久性もあまり考えられていません。したがって、高回転でスロットルを閉じたりエンジンブレーキを効かせたりするとシリンダやコンロッド、クランクとそのベアリングに余計な負担が掛かり、ベアリング破損の恐れがあります。

 また、スロットルの開閉に関係なく常にクランクベアリングがエンジンオイルに浸されている4サイクルエンジンに対してKRの2サイクルエンジンは混合気(ガソリン・空気・エンジンオイルを気化させた物)を直接クランクケース及びベアリング部に通す事によって潤滑・冷却している為、スロットルを戻せばアイドリング時と同じ位の混合気×回転数分しかクランク内に送られません。混合気に混ざるエンジンオイルの量も比例して少なくなるのはスロットルとオイルポンプが連動している事を考えれば容易に想像がつきますが、その様な状態にかまわずクランクは速度とギヤ比に応じて回転し、ピストンは摺動しているのです。

 スロットルを閉じて爆発力が得られなくなった為に発生するバックトルク(後輪からの引っぱり)、加えて混合気をカットされた為に起こる潤滑・冷却不足、これが高回転で続けば、当然シリンダとピストンとコンロッドとそのベアリングに大きな負担がかかる事となります。だから焼付きやクランクトラブルは高回転からスロットルを戻した瞬間に多く起こるわけです。増してKRはタンデムツインエンジン、お互いのクランクシャフトがそれぞれ勝手に動こうとする為、ベアリングに対する衝撃や負荷は他車より大きく、痛みやすいです。

 つまり、タンデムツインエンジンでは高回転(特に最高速)からスロットルを戻すならクラッチを切ってからにしろ、という事です。

 加えて、クラッチを切るだけでなく戻した瞬間からは中回転程度の空吹かしを数回くれてやれば、燃焼室内温度に対して少しでも多く混合気とオイルを供給させることが出来るのでなお良いでしょう。

 その後、また加速する際はクラッチを切ったまま空ぶかしで「この位だろうな」と思える回転数に上げてクラッチを繋いで、加速すればいいのです。一見、無茶に聞こえますが慣れれば大変な操作でもありません。(筆者も習慣的にやっています)また、この操作に慣れればエンジンだけでなくクラッチ・チェーン等の駆動系にかかる負担も少なく出来ると思います。さすがにレースや街中では難しいので無理にこれを行う必要はありませんが、高速道路を飛ばす時などは必要な操作です。

 どれくらいがベアリングに負担が掛かる回転数であるか明確な基準はありませんが、これまで幾多の焼き付き・クランクベアリング潰れの経験から、主に8千回転以上でのパーシャル巡航やそれ以上の高速、最高速の維持が危険と思われます。

 

コンロッド大端部をこまめにチェック

 クランクのベアリングのガタと思えるエンジンの異音が大きくなったら、ベアリングやスペーサが壊れてとりかえしのつかないことになる前にクランクを分解し、後に述べる対策を実施するべきでしょう。音に関して言えばクラッチハウジングのガタ、前述のキャブレタやカムダンパ(プライマリギヤダンパ)による前後クランクの同調不良も考えられるので早合点は禁物です。

 また、こまめにエンジントップを分解・清掃し、その度に必ずコンロッドの動きによりクランクベアリングのガタをチェックしてやることが重要です。コンロッドの小端部、次に大端部に近い部分を指でつまんで上下に動かしてみて、ガタを感じるようだったらベアリングとスペーサを交換する必要があります。なお、コンロッドはクランクシャフト上を0・1ミリ幅でスライドするようにできていますので、その程度の左右の振れは問題ありません。上下かナナメのガタに気を配って下さい。また、片手でコンロッドをしっかり握り固定して、もう片手でコンロッドを上端から軽く叩く、という調べ方も併用します。叩いた振動がクランク全体に「ズン」と伝わる感じであれば問題なし、大端部付近から「コツッ」という音が返ってくれば異常(ガタ)が出ているということになります。

 

既に破損した場合のベアリングの交換

 前に述べましたがベアリングは純正の新品を入れ換えればしばらく安心できます。

 ここで、ただ新品のベアリングを入れて安心するだけでなく、これを機会にベアリングは知る限りで一番高品質の物を使用する(ベアリングはバイクのエンジンの高熱、高回転に耐えられるタイプの物である必要があります。選別や入手方法は電話帳に載っているベアリング屋に相談すると良いでしょう。その際、純正パーツとして仕入れたベアリング現物をそのままを持って行けば、サイズに迷う事もありません)、クランクピンを圧入し、きちんと芯出しをする(圧入は専門的な技術と機械を使用し、非常に精密な角度で行われます。これも分解時と同様、エンジン専門の加工・再生を行っている工場に依頼するのが一番確実です。また、そういった工場では圧入の後工程として必ずクランクの芯出しをやってくれます。圧入にかかる費用はクランク一本につき相場3千円位です)、といったことも行うべきでしょう。

 ここまでやれば、交換後の新品クランクベアリングの耐久性は格段にアップするはずです。

 

クランクの圧入・分解にあたって

 ベアリングの交換に必要な作業がクランクの分解ですが、クランクシャフト及びクランクピンは一度分解・圧入をすると圧入部の耐久性は格段に減少し、ねじれ等の問題が発生します。以前のクランクを再使用する場合は芯出しと同様に圧入部の溶接を、できることならクランクシャフト、せめてピンだけでも新品を使用したいものです。

 

エンジンオイルについて考える

 また、ベアリングやスペーサ等の部品だけでなくエンジンオイルについても考えてみて下さい。より混合気に噴霧化しやすくガソリンに溶けやすい、上質の化学合成油である事を条件に選ぶべきで、ここでオイル代を惜しんでクランクベアリングの寿命を縮める事はないと思います。

 

 

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 【初期・S】クランク同調不良
[初出:KROG会報『私立KR学園』5号掲載、2000年5月改訂] 

 

★症状★

 該当車両はタンデムツインエンジンの初期及びS型にあります、というか数多いタンデムツインのトラブルの中でも代表的、かつ致命的なトラブルでもあります。信号待ちなどでしばらくアイドリング状態の後、「いざ、前に進まん」とスロットルを開けたのに回転が1000rpm以上、上がらず、さらにスロットルをあおるとエンストする、もしくはしそうになる…というのが症状で、その場で一時的に直って発進出来てもまた次の発進の際に出るという大変始末の悪いトラブルです。症状が軽いうちにバイク屋に持っていっても再現性に欠け、(その場でトラブルが出ない)説明のしようがないという歯痒さはタンデムKRオーナーなら一度は体験したものではないでしょうか。

 このトラブルが出ると、スロットルを開けようとすると開けるほどにエンジンが止まりそうになり、結局エンストした直後もエンジン始動が困難な場合が多いですから、信号待ちで大恥をさらす事うけあいです。

 初期症状のハッキリしないうちに本件トラブルを見分けるには、わざと低回転(2000rpm以下)でクラッチを繋ぎ、その回転からスロットルをガバ開けしてやります。判りやすく言えば一速でアイドリング回転数で完全にクラッチが繋がってゆっくり前に進んでいる状態でガバ開けしてやるということです。エンジンが冷えている状態でこれをやって失速(失回転?)するのは普通ですが、タンデムツインエンジンでなおかつ走行直後のエンジンが完全に暖まっている状態で回転が上がらなくなる症状が出るとしたらこのトラブルの前兆であると判断できます。バイク屋等で状況不再現(トラブルが出ない)の場合においてもこの方法で証明が可能です。

 尚、このトラブルは悪化するに応じて、異音や始動不良の度合い、発信不良の頻度が増加します。また、ヘタリに応じて発進時低回転のトルク低下も見られます。極低回転でしか起こらなかった症状も、悪化するにつれてその幅も広がり、低回転域まで及んできます。

 但し、キャブレターの同調調整・スロットルバルヴやロータリーディスクバルヴ(RRIS)の摩耗・ギャブレターのオーバーフローや負圧送気パイプの潰れ・詰まり等 の原因でも同調不良・発信不能の症状は出ます。これらトラブルについては他の項目に詳しく述べてありますので、それら一つ一つを消去法で消していってもなお、症状が出る場合において後に述べる対策を実施して下さい。

 また、断定は出来ませんがエンジンの音や振動で見分けることも可能かもしれません。一般的にこのトラブルの出ているタンデムツインエンジンには、クランク右側・クラッチケースの辺りからアイドリング時に振動を伴った異音(「カラカラカラカラ」と「ダダダダ」という音がブレンドされたような音)が発生し、なおかつ大きくなっている場合が多いようです。
 一見(一聞?)クラッチハウジングのヘタリからくる異音に聞こえがちですが、クラッチを握っても音にほとんど変化がないので、「クラッチのジャダーではない」ことが判ります。また、クランクベアリングの異常とも思われるかもしれませんが、クランクベアリングの異常にありがちな、レーシング(空吹かし)時の「ゴワーガゴー・・ゴワーガゴー・・ゴワワワワ・・・」という回転数に伴った異音の変化も見られない事からクランクが原因でないことも判ります。キャブレターの同調が大幅に狂っていれば同じ異音と振動はありますが、開き初め同調調整・アイドリングの同調(『対策後キャブレターの相異点』参照)が極端にずれていない限りそれは出ません。また、それはキャブの適当な同調調整で直ります。すなわち、『音と振動の質』、『キャブレター同調調整で消えない』、この二つにより、音と振動で症状を見分けるられるかもしれません。

 ただし、これらアイドル時の異音・アイドル回転低下(アイドルストップスクリューがかなり奥までねじ込んでもまだ低い等)の症状はロータリーディスクバルヴ(RRIS)の磨耗やキャブレター内壁〜スロットルバルヴ接触面の磨耗からも発生してる可能性もあります。両システムは走り方次第では3〜4万キロで使い物にならなくなるので定距離的なアッセンブリー交換は必要です

 では何故、このトラブルが発生してしまうのでしょう。

 

★原因の解明★

 基本から説明しますとタンデムツインエンジンには各シリンダーごとに一本ずつクランクシャフトがあり、その二本の動力をギヤを介してクラッチに伝えています。エンジン右側、クラッチの内側に位置するそのギヤの名称は、各クランク側の小さなギヤをプライマリー・ギヤ、クラッチ側の一つの大きなギヤをクラッチギヤと呼びます。(図表参照)

 同調不良の原因は、プライマリギヤにあります。

 プライマリギヤ本体の中は「カム(ダンパー)」と「シュー」、 皿ばね状の「ダンパースプリング」(2種類)、そのスプリングの荷重を調整する為の「ワッシャー」(選択式の2種類)から成り立っています。(図表後半参照)

【注】図表は、初期タンデム(KR250A)型のものです。ここで呼ばれるS型(KR250A2)では、プライマリギヤ内の部品構成が違ってきますのでご注意下さい

クラッチギヤ
(エンジン右側内部)

プライマリギヤ
(エンジン右側内部)

※内側に見えるのがロータリーディスク及びポート

組み合わせ時
(図Aはキックスターター)

プライマリギヤの中身の構造
(タンデムツイン初期型の場合)

※4のワッシャー(2種類厚)にてA長を調整する。A長の詳細は後述。

プライマリギヤ組付け時

汎用のバルヴコンプレッサーや万力等を用いて圧縮しつつサークリップを取付ける

 これらの機構は前後シリンダーの交互爆発による振動を緩和してからクラッチギヤに動力を伝える、前後クランクを同調させる為のシステムですが、結局うまく働かず、その結果として同調不良を起こす訳です。

 実に、メーカー・カワサキがこれまでレーサーとしては実績のあったタンデムツインエンジンを市販レプリカKRへフィードバックさせた際、振動を軽減する目的でレーサーの同時爆発から交互爆発へ切り替える為に初めて必要となったシステムと言えます。結論としてこのダンパー機構は泥縄的発想であり、市販KRに於いてクランクシャフト2本分の膨大なクランクマスの増大・駆動抵抗の増加・レスポンスの悪化に貢献し、ひいてはカムダンパシステム自体の摩耗による本件トラブル、振動と衝撃を発生する為クランクベアリングのトラブルの原因に至っています。

 この為市販KRは、ライバル車に対して猛烈なパワーロスのハンデを背負っているはずなのですが、それでも雑誌の比較テストで同等の性能を発揮させたのですからメーカー・カワサキの技術力は見事としか言わざるを得ません(空吹かしのレスポンスだけはライバル車の片肺並でしたが)。あるいはレースで常勝しているタンデムツインの反則的なポテンシャルを利用して上記駆動ロスとの相殺をも狙っていたのでしょうか。今となっては知るべくもありませんが…

 言えることは、果たしてここまでして市販KRにタンデムツインを採用して得られたメリットが、エンジン幅のスリム化とレーサーと同系エンジンという名声のみで、他はトラブル多発と駆動ロスばかりで他メーカーのライバル車に対して実力的に不利を被ったのが、惜しまれるところです。

 

★対策★

 プライマリギヤの内部機構、カム(ダンパー)がうまく働かない原因は、カム(ダンパー)・シュー・ダンパースプリングを組んだ状態でノギスで計る寸法A(下図表参照)測定値が基準(太字)に達していない為です(基準値より多くても足りなくてもダメです)。

これは、走行によるヘタリでずれてきます。通常では初期型も、カムダンパに大幅な改良を受けたS型も、約2〜3万キロでヘタリ(距離に関しては、乗り方や車体でかなり大きな差があるようです)、分解・調整が必要となります。

 分解・調整の際は、できればシュー・ダンパースプリング(皿ばね)・調整用ワッシャー・サークリップ…つまりカム(ダンパー)とプライマリギヤ本体以外は全て新品を使用すべきで、最低でもシューと皿ばねは交換します。マニュアル記載のグリス塗布も忘れないようにします。当然、サービスマニュアル無しでは不可能な作業ですが、初期型のみここで注意して欲しいのは初期型用マニュアル記載のワッシャー選択表です。(下図表参照)

 実はメーカーのサービスマニュアルでは、初版第二刷からワッシャー選択表の数値(太字)が訂正されてます。

  ここで手持ちのサービスマニュアルが初版第1刷の場合は、上の図表の数値か初版第2刷(1984.10.30発行)以降の説明を参考にしてワッシャーを選択して下さい。

(情報提供:じゃむ@てんちょ様)

 この改訂は初期KRが発売されてからすぐ、まったくのいきなりで、メーカー側からは何の発表もありませんでした。その為、個人ユーザーはほとんど、「初期KRでレースをやっていた」「販売台数が多かった」等の理由で初期KRのアフターサービスに特に精通していたごく一握りの正規販売店等を除いたほとんどのショップも旧版のみしか持っておらず、そのデータによってワッシャーを選択してしまうために「マニュアル記載の数値通りにやってもまた同調不良が出る」「店でやってもらっても直らない」という現象が各地で相継いだわけです。

 例えばキャブレターの同期調整についてもメーカー側からは何ら告知もなくマニュアルの内容が変更されています。ご注意。

 

 

 尚、S型(タンデム)についてはメーカー発行の追補版(S型タンデム用マニュアル)記載の数値通りに、指定の4種類厚のワッシャでA長を調整し組み込んで下さい。個体差や乗り方により違いますが、交換及びA長調整は2〜3万キロ毎が目安の様です。

 

 当トラブルシューティングは、メーカーから発行されている純正のサービスマニュアル(及びパーツリスト)記載の作業手順で行われる事を前提としており、説明補助の目的でサービスマニュアル(及びパーツリスト)の図表及び画像を転用しています。

 原則的に当HP上にあるデータのみを参考とせず、ご自分でマニュアル(初版第2刷以降)等を入手して作業を行ってください。

 

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【初期】焼付き・クランクトラブルの元凶!対策後キャブレターの相異点
[初出:KROG会報『私立KR学園』5号掲載、2000年5月改訂]

 

 タンデムツインエンジンである初期型とS型でカムダンパ関係の部品形状に違いがあるのは『クランク同調不良』で述べましたが実は初期型の中にもキャブレターにも生産された時期によってスロットルバルヴ形状にごく微妙な違いが見られるものがあります。果たしてこの違いがセッティング的にどう違いが出てくるのか分かりませんが、前後キャブで違うものが入っているのでは悪影響も容易に想像できるというものです。

 現時点で確認されているスロットルバルヴには、以下の2種類があります

●アイドルスクリューが当たると思われる場所に削り込みのような加工痕がある(加工後黒染め処理されたように見受けられる)。カッタウエイに相当する底の部分の切り欠き加工が、やや丸みを帯びている

●アイドルスクリューが当たると思われる場所に削り込み加工痕は無い。カッタウエイに相当する底の部分の切り欠き加工が、やや角が立っている

 この2種類のスロットルバルヴは、アイドルスクリュー受の加工痕の有無で明確な判別がつきます。カッタウエイに関しては、2種類を比較して凝視しなければその違いに気が付きません。アイドルスクリュー受の加工痕で見た方が確実でしょう。

 問題は「どちらが後に設計変更された物であるか」ですが…現在のところは中古部品からのデータでしか調べが付いてないのでどちらが新しいかは断定出来ません。ただ、S型のキャブレター内部部品の中で唯一、このスロットルバルヴだけが初期型と共通部品(16025-1120スロットルバルヴ、CA2.5)なので、いずれかの形状にS型と共通部品として一本化されたものと考えられます。

 この為、現状で対策を行うとすれば、新たに一個のスロットルバルヴを注文して、まず届いた物と既存の2個を比較してから新しい方をもう一つ注文するといった方法になります。どちらが対策品であるかは現在の新品スロットルバルヴ次第というわけです。

 初期生産車両のみ上に述べた2種類のスロットルバルヴが前後キヤブにたがい違いに入っていた可能性も考えられます。

 

 

 さて、この初期型のキャブレター及びスロットルバルヴですが、同調調整方法も変更されています。

 マニュアル初版第1刷(1984.4発行)では『前のスロットルバルヴが後ろのスロットルバルヴに対して2〜3ミリ先行して開き始めるように調整する』とありますが、初版第2刷(1984.10発行)には『前後スロットルは同時に開き始めるように調整する』と書かれています。

(情報提供:じゃむ@てんちょ様)

 初版第2刷以降の説明 (同時に開き始めるように調整) に従って設定して下さい。

 旧マニュアル『前のスロットルバルヴが後ろのスロットルバルヴに対して2〜3ミリ先行して開き始める』 は、確かにピックアップが良いのですが、スロットル全開継続時に焼付きを起こす可能性があります。

 開き始めからして段違いでは全開で焼付くのも当然ですが、当時レースユースのユーザーやショップからのクレームが相次ぎ、カワサキはスロットル同調調整についての指示を『同時に開き始める』へと改め、第2刷以降のサービスマニュアルを密かに記載変更しました。

 その為、初版第1刷のマニュアルのみを持っているユーザーや多くのショップで修理後もすぐ焼き付くというトラブルが相次ぎました。

 

 

 いずれにしても本件対策は初期KRの車体購入後必ず必要と考えられます。焼付きだけでなく、クランクベアリング潰れ同調不良の原因となるからです。中古車両などは何かの要因で新旧もしくは前後のスロットルバルヴがごちゃ混ぜに付いていたり、それでなくても何時のマニュアルにより同調調整されているか判ったものではありません。

 既に述べた方法でスロットルバルヴを最新の物に統一し、同調調整をマニュアル改定後の『グリップを僅かに開き、前後のニードルが同時に上がり始める』に従いアジャスターを調整します。

 個別のアジャスターはスロットルケーブルのキャブ寄りにあります。

 

 尚、マニュアル記載によるとアイドリング調整や前後開き始め同調調整は専用の調整ニードルを使うことになっていますが、わざわざそんな物を取り寄せなくても、直接エアクリーナボックスからの斜めのダクトを外して両キャブの合い口からスロットルバルヴの同時上がりを目視確認したほうが確実です。

 蛇足までに、新スロットルバルブを組む前に旧品と混同しないように、前・後・新・旧を鉛筆でマーキングしておくと取り違える事もなくなります。鉛筆の字は消え難いので今後の分解作業にも安心です。

 

【参考】互い違いのスロットルバルヴの組込み及び旧マニュアル記載セッティングのされたKRに見られる症状

▼アイドリング時、前後シリンダーの爆発回数が違うように聞こえる(片方が細かいタイミングで不正爆発しているような音)
▼改訂(対策)後のマニュアルに従って同調調整(グリップを僅かに開き、前後のニードルが同時に上がり始める)しても、アイドリングで前後シリンダーの爆発回数が違うように聞こえる
▼改訂(対策)後のマニュアルに従って同調調整をするとエンジンが焼き付く
▼ノーマルセッティングでも、他の初期型に比べてよくエンジンが焼き付く
▼ノーマルセッティングでも、他の初期型に比べてよく
クランクベアリングが破損しやすい
▼クランク同調不良が出やすい、もしくは対策をしても他の初期型に比べてカムダンパのヘタるペースが早い
▼トラブルシューティング『
クランク同調不良』で対策をしても似た症状が出る

 

 最後に、KRはロータリーディスクバルヴ(RRIS)や強制開閉式のVMキャブを採用しています。ロータリーディスクバルヴやキャブレター内壁のスロットルバルヴ摺動面は少しずつですが磨耗していきます。走り方次第では4〜6万キロでスカスカになって使い物にならなくなるので定距離的な部品交換は必要と思って下さい。

 

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【初期・S型】エンジンケース、クランク内へのオイル混入
[初出:KROG会報『私立KR大学』6号掲載、2000年5月改訂]

 

★症状★

 ミッションオイルが減る、下マフラー(前シリンダー)からの白煙が異常に多い、同様に前シリンダー側が優先的にカブったりカーボンが溜まったり焼き付いたりする

 

★原因★

RRISシール不良

 初期・S型KRにはロータリーディスク・リードバルヴ(RRIS)と言われる吸気システムを採用しています。このシステムは、クランクシャフトからギヤを介して回転する切り欠きのあるディスクがあり、その切り欠きの分だけ混合気をクランク室内に導く、バルブタイミングの役割を果たしています。RRIS室の外側にそれを回すギヤ室がありますが、そこにはミッションオイルがきています。ここからミッションオイルが侵入する場合があり、RRISシステムに使われている幾つかのシール類(図)を交換する事で侵入は止まります。

 

クランク室内隔壁破れによるのミッションオイル混入

 KRの両クランクケース接合面には液体ガスケット(シリコン系)が使用されています。(サービスマニュアルに塗布の指定はありませんが常識です)これら繋ぎ目のシーリングが劣化するとミッション部からミッションオイルがクランクケース(一時圧縮室)内に混入(図)、ここで混合気と共にオイルは燃焼室へ送られてしまい、文頭に述べた症状となります。

 両クランクケース接合面のシーリングは作業難所でありメーカーも気を使っているはずなのですが長い年月にさらされればシール力の低下も考えられます。

 また、現実にこのトラブルが発生したKRでは、キャブレターのオーバーフローによりクランクケース(一時圧縮室)内にガソリンが充満している状態で無理にキックを降ろした経緯があったため、(図)の隔壁に矢印とは逆方向に液体の圧力が加わって吹き抜けたのではないかという人為的な要因もきっかけとして考えられています。

 

左側転倒によるゼネレータへのミッションオイル混入

 クランクケース左側を分解していくと初めて気が付くことになると思いますが実はケース左側のローター(パルサー)室の底に設計上不可解な大穴が開けられています。ミッション関係の逃げか何か詳しくは不明ですが…通常この穴の下にはミッションオイルが波打っていることになるわけで、深く左側に転倒もしくは左側に転倒したままにするとローター(パルサー)のある部屋まで穴を伝ってミッションオイルが混入してしまうケースがあります(図)。さらにローター(パルサー)室と隣のフライホイール室は繋がっているので(図)、この問題の場合文頭にある「ミッションオイルの減少」の他に「充電されない」「発電が弱い」といった電装的な症状が出ることも考えられます。

 

▼▼対策▲▲

 オイル混入による文頭の症状を発見した場合、まず左側エンジンケースを開け(図)(図)へのオイル混入があるかどうかを確認し、そこにオイルが発見されなかった場合RRIS側を分解し、前図Aに示したオイルシール類を全て新品に交換してみましょう。それらを交換してもRRISからへの混入が認められる場合は、RRISディスクと一体化しているゴム軸受け(厚め)の不良が考えられますのでRRISディスクも交換します。

 ただし1998年8月現在ではロータリーディスクとホルダー、各シールが本件オイル混入対策を施されてなおかつ全部一緒になった対策部品セットとして出ているので、セット単位の購入になります。その対策品は見た目にシール類の形状が変わっていました。

 これらの対策をしてもまだオイル混入の症状が見られるならば、最悪クランク室内隔壁破れによるミッションオイル混入(図)が原因として考えられます。対策はクランク室を縦割り…つまりエンジンを全バラにすることになる為、相当な分解時間、知識、技術、手間、ローターホルダ等の特殊工具類(サービスマニュアルに記載)、エアインパクト、コンプレッサー等の大型工具類、泡を吹く数の指定交換部品を必要とし、業者に依頼する場合は莫大な費用と時間がかかることを覚悟しなくてはいけません。(もっともここまでくると業者の方から断られるケースも考えられます。現在ではタンデムツインエンジンどころか初期KRさえ知らないショップが増えてきました)それでもそのエンジンを直す必要が有るか否か…よく考えてから、作業に踏み切ることをおすすめします。

 対策はあくまでも常識の範囲内です。丁寧な分解(こじらない)、両クランクケース接合面に残る液体ガスケットをしっかり剥がす、同様に接合面のチェック(クラックが入っていないか)面出し、オイルストーンを使用する、液体ガスケット(シリコン系)を丁寧にムラなく塗布、ボルト締め付けの順番と規定トルクの厳守…これらはプロの手による作業でも手抜き、無神経は禁物です。バイク屋に量産ホンダ車のクランクを相手にするような組まれ方をされたのであればすぐに同じトラブルが発生します。KRの場合、たとえショップに依頼するにしてもその監督責任は依頼側にあることを忘れないで下さい。

 

今回のトラブルシューティングは 副長【外道】近岡氏、閣僚・白神和彦氏 による情報をもとに作成されています。両氏の情報提供に感謝致します。

 

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【初期・S型】ミッションオイル漏れ(各所)
[初出:KROG会報『私立KR大学』6号掲載、2000年5月改訂]

 

▼▼症状1▲▲

 高速走行後、ステッププレートやスイングアームやリヤホイールにミッションオイルがベッタリ。知らぬ間にチェーンが給油されている。ミッションオイルの減少。

 

▼▼症状2▲▲

 通常走行、もしくは停車の度にオイルが地面にポタポタ。スプロケの奥やチェンジペダルの根元、ドレンボルト、エンジン底面までオイルが伝っている。ミッションオイルも少しずつ減少。

 

▼▼原因▲▲

 症状1はFスプロケットの内側にあるオイルシール不良(図)により漏れが発生、症状2ではスプロケとチェンジペダル内側にあるカバー(シフト)(図)の合わせ目の液体パッキン不良により漏れが生じます。また、ドレンボルトのアルミワッシャ(図)やクランクケース底面中央部にあるニュートラルスイッチプラグ(図)の配線部から洩れている場合があります。これら症状は中古で購入したKRのほとんどに見られ、カバー(シフト)周辺のオイル漏れ対策は購入後のなかば『儀式』として考えられています。

▼▼対策▲▲

●スプロケ内側のオイルシール及びシフトペダル内側のオイルシール(図、ドレンボルト及びそのワッシャ(図
全て新品と交換します。シールは噛み込まない様、注意して挿入して下さい。

●カバー(シフト)(図
 カバー(シフト)を締めている皿ネジ(図)は非常にネジ山が損傷しやすいので注意してショックドライバかエアインパクトを用いて緩めます。外したカバー(シフト)とクランクケース合わせ面の古い液体ガスケットをきれいに取り去り、合わせ面両側をオイルストーンで磨いた後、サービスマニュアル記載の塗布禁止面に注意して、接合面にムラの無いように液体パッキンを塗り込み、カバー(シフト)を組み付けます。(締め付け順番はマニュアルに指定されてます)カバー(シフト)を止めている皿ネジも毎回新品を使用して組み付けます。

●ニュートラルスイッチプラグ
 エンジン底面中央に位置する為、脱着の際エンジンを地面に直置きすると必ずと言って良いほど痛み、プラグ本体と真鍮製の芯の間からオイル漏れが始まります。中古でエンジン単体を入手した場合、このスイッチとワッシャー(図)は有無を言わさず新品に交換します。また、自分でエンジンを脱着する際もあらかじめオイルを抜いてこのスイッチプラグを取り外しておきましょう。プラグは、アンダーカウルと下側(前側)チャンバーを外せば手が入ります。

●最後に
 アンダーカウル内側、カバー(シフト)、エンジン底面、リヤサス本体、フレームのアンダーチューブ等を灯油、洗油等を使って徹底的に脱脂します。試走後、オイルの漏れ・ニジミが見られたらシールし直します。

 

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【初期・S型】負圧FUEL(燃料)コック不良
[初出:KROG会報7號『季刊ブルーハワイ金時』掲載、2000年6月web改訂]

 

▼▼症状▲▲
・分解洗浄してもキャブレターがオーバーフロー
・発進時の失速、低回転トルク不良、クランク同調不良
・エンジン始動が困難
・コックをPRI(プライマリ)以外に切り替えても(ONもしくはRES)ホースを外すとガソリンが洩れる
・FUELコック〜後ろシリンダ側キャブ間を結ぶ負圧パイプ(細)に燃料が混入してしまう

 

 

▼▼原因▲▲

〜〜まず理解しよう、KRの負圧式FUELコックの仕組みと働き〜〜

 KRは、キャブレターが混合気を吸い込もうとする力「負圧」を利用しFUELコック内部の弁を開かせてガソリンを通す、負圧式のFUELコックを使用しています。このためKRのFUELコックは、前後キャブへ行く太めの燃料ホース2本、キャブ〜コック間の負圧用ホース(細い)の計3本がつながっています。

 ちなみにONとRES(リザーブ)の切り替えは燃料タンク内部のフィルタ部分で燃料の吸い出し位置(高さ)を変えて行われるもので、太いホースの左右には関係ありません。つまり燃料ホース(太・2本)は切り替わった後の燃料の通り道でしかないわけで、それぞれ別のキャブへ向かいます。

 通常、負圧式FUELコックはキャブから細いホースを通じて負圧が弁を引っ張らない限り燃料は降りて来ませんので、エンジンが掛かってない状態(負圧が発生していない)であれば、ONでもRESでもOFFの働きとなります。PRIは負圧に関係なく常時、燃料が流れるようになっています。それが正常な負圧式FUELコックの仕組みです。

 

▼▼チェック項目▲▲

 エンジン停止状態でチェックします。FUELコックから燃料ホース(太)2本と負圧ホース(細)の全てのホースを外し、ONまたはRESでも3本のコック口から燃料が洩れてこないかを確認します。

 負圧ホース(細)をコックから外したらホース口を下に向けて、ホース内に燃料や水が混入していないかも確認します。

 

負圧式FUELコックシール不良

 コックから全てのホースを外した状態で、たとえ僅かな量でもコック口からガソリンがずっと滴り落ち続けているようであれば、コック内部のシール不良によるトラブルです。結果としてキャブが要求するしないに関わらずガソリンがキャブに送られてしまうのでキャブレターのオーバーフローを起こしたりします。

 このオーバーフローにびっくりして、実はコックのシール不良が原因と思わずにキャブ本体の分解掃除を繰り返してしまう人も多いようです。また、問題のシールはコック内部でトラブルを起こすので、コック中央〜キャブ間の負圧ホース(細)内にガソリンが混入してしまうケースもあります。基本的に「負圧ホース」ということは空気の通り道なわけで、その通路にガソリン等異物が混入すると空気(負圧)異物に遮られて燃料コック内の弁を引っ張れなくなり、エンジン始動困難、発進不良、低速トルクの低下といった燃料切れっぽい症状が発生します。これら症状は『クランク同調不良』に酷似しており勘違いされやすいだけでなく、それを増幅させてしまうため、クランク同調不良の初期症状をも末期症状並に感じさせることもあります。また、負圧ホースへの異物液体の混入が酷いとエンジン始動不能や片肺も発生します。特に負圧ホースは細く柔らかく潰れやすいので、付け外し時のミスによるホース潰しや折り曲げ、付け忘れ、劣化によるエア漏れには十分注意しましょう。

 

▼▼対策▲▲

 FUELコック内部のゴムシール、Oリング、ダイヤフラム等樹脂部品 下図1〜3を全て交換します。燃料コック切り替えツマミ側の鉄製のリングは小さく薄く、単品で部品が出ません。紛失に気を付けましょう。

 

▼▼注意点▲▲

 症状にオーバーフローが見られる場合は念のため、キャブレターの分解清掃を行い、フロートバルヴが段つき磨耗していないかをチェックします。

 尚、メーカー側の部品管理によりコック関係の部品構成が変わっている可能性があり、97年現在、図1〜3部品がASSYとなって出てくる様になっています。この場合従来のコック部品(タンク側ASSY)にも組めますが、の負圧ホース取り付け口と従来の負圧ホースとで太さが合わない可能性がありますので、内径の合った市販ホースで代用して下さい。

 ダイヤフラム・シール類を全て交換しても負圧ホース側への燃料混入や漏れの症状がみられる場合はコックASSY(本体)そのものを交換して下さい。

 それでも直らない場合や、出先でのコックの不良が出て修理出来ない場合は、負圧ホースを取り去りキャブ側の負圧ホース栓をメクラし(塞ぐ)コック切り替えを常時PRIとして(つまり機能的に常時落下式の機能にして)走行する事が出来ます。が、この場合タンクは常時リザーブの位置で使用している事になるのでガス欠に注意して下さい。また、全開高速走行時、燃料供給不足による焼付きの危険性もあります。飛ばさない人(全開最高速維持等)に関しては心配ありません。

 質問があったので、以下に負圧コックのメクラ化の一例を記述しておきます。

 

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 コックはとりあえずRESにしておきます。(走る時はPRIにします)

 負圧パイプがコック下の真ん中から上側のキャブに繋がっているのが見えると思います、まずそのパイプを外します。

 外したら、そのホースを上から4cm位切って、それを利用します。

 4Cmの負圧チューブの内径に合う、ネジを探します。

 首に向って太くなってくる、タッピングビスあたりが良いと思います、負圧ホースの穴にキツく押し込めるサイズであれば普通のビスでも構わないでしょう。

 水道管やオイルパンのねじ山に巻く、白いシールテープをねじ山に巻いて、ホースにねじ込みます。ねじこんだら指で引っ張っても抜けないキツさである事も確認。

 ホースがねじ山の分膨らむくらいのサイズがベスト。

 それを、上側キャブの負圧栓に取り付けます。

 使った物と言えばその辺の余りネジ一本とシールテープとハサミくらいなものです。

キヤブ側のホースバンドが針金みたいな貧弱なのだったら、市販のネジで締め込める物に換えたほうが良いでしょう。

 細かく書きましたが、考えれば普通に思いつく事ばかりのはずなんですが… ???

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 尚、カワサキ系燃料コックには汎用性があるようで、初期・S型のタンク穴にKR-1Sのコックがタンクが取り付けられます。ただしリザーブの量が若干変わってしまう様です。こちらはダイヤフラム関係部品が単品で出ます。部品番号は 51023-1168 タップアッシ・フューエル(KR250-D1)、値段は98年末現在で\3760です。 [情報提供/九州支部長・下川正行様]

 さらに、ゼファー用の負圧コックが取り付けられる事が判明しました。使用実績も有りです。

使用パーツは、・ゼファー400用燃料コック・デイトナの燃料フィルター(ホース径変換のと一体物で700円位)・キジマの燃料分派器(プラスチック製Y字型)・耐油ホース

 です。

 但し、ゼファー400用コックをAssyで流用される方は、コック本体からタンク内部に伸びるフィルタ棒の、ガソリン吸い出し位置が変わるということを留意しておいて下さい。流用実績者によると、「ギリギリになってからRES(リザーブ)に入るため、ガス欠の危険性がある」との事でした。[流用情報提供/KROG-ML・平野康二(やす2@大阪)様]

20050522追記、KR-1R用のコックは落下式となっているようで流用は出来ないようです。 [情報提供/しととの様]

 

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【初期・S型】1速でブン回すと失火!? サイドスタンドsw誤作動
[初出:KR.Promotion.VTR『PASSENGER・・・』取扱説明書掲載、2000年5月Web改訂]

 

【症状】

1速、2速パワーバンドに入ってすぐ、急にガクンとパワーがなくなる・・・ というより、もろ失火する。
すぐ直るが、クラッチをきってやらないと直らない時もある。

 これはサイドスタンド払い忘れ防止装置(正式名称は知らないが)の異常作動によるものです。本来、この装置はサイドスタンドを出したままでは発進できないシステムなのですが、異常作動(短絡?)を起こし、走行中サイドスタンドが出てる時と同様の信号が点火系の電流をカットしてしまい、急にスパークしなくなる訳です。パワーバンドに入った次の瞬間、リヤブレーキを思いきり踏み込まれる様な物ですから体感的なショックが酷く、不安、かつ危険なトラブルと言えます。筆者はその後、さらに吹き返しの猛加速をくらい、振り落とされそうになった経験もありました。安全装置が聞いてあきれます。

 

【対策】

 対策はいくつかの方法がありますが(サイドスタンド根本のスイッチの配線を直結もしくは断線してしまう等)、点火系プログラムにも誤作動の障害が残っている場合を考えて、確実な方法を紹介します。

 症状は「クラッチを切れば直る」と言う訳ですから電気的にクラッチを握ったままの信号を出させるようにしてしまいます。まずハンドル側のクラッチレバーホルダーから伸びている配線をホルダーから数センチの所で切断します。切断した配線のハーネス側(車体側)二極を直結させてください。この方法にて電気的にのみ常にクラッチを握りっぱなしの状態になり、失火はなくなります。但しサイドスタンド安全装置は働かなくなります。これに併せて、必要の無くなったサイドスタンドSW本体を取り外せます。但し、必ず取り外した後のハーネス側に残る3本のリード線のうち黒/黄のリード線と白/青のリード線を直結する様にして下さい。この処理を怠ると点火系に電流が流れなくなる場合があります。

 尚、この装置は現在に至るまでほとんどのカワサキ車に採用されています。

 

 

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【1S・1R】KR-1S(1R)のミッションカセットが抜けない!

 KR−1以降のエンジン(パラレルツインエンジン)は、ミッション関係部品のBOXだけ取り出せる『カセット式ミッション』を採用しています。1Sや1Rのカセットミッションは見つけにくい位置に取り付けボルトが一つ増えています。(情報によるとシフトリターンスプリングの内側あたりにボルトが追加されていたとか)これは後から製造工程に付加されたらしくKR−1サービスマニュアル追補版(1S/1R用)に記載されてない可能性があります。

[情報提供:AROC会長・中村てつや様] 

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【初期・S型】バッテリーケースの底面のボルトについて

 中古車両を入手したらすぐさま、バッテリーケース底のボルトを抜いておきましょう。雨水がたまる上にバッテリー本体の息抜き穴が近いので、そこから出る希硫酸ガスに晒される為、信じ難いスピードでボロボロに酸化して(サルフェージョンも)していきます。

 そもそもここのボルトを抜いたくらいじゃバッテリーケースは落ちません。ケース底のボルトがあったら抜けるウチに抜いておきましょう。症状が進行すればボルトの頭などは錆びて溶けて跡形もなくなり、こうなってしまったらバッテリーケースを外したくても外せず、サンダー等でボルトの頭を削り落として抜くしか抜く方法はありません。

 

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【初期・S型】カウルの各ボルト取り付け部の劣化、ヒビ、割れ対策

 バイクのフルカウルが認可されるようになったのは1984年初頭頃です。同年に登場した初期型KRはカワサキ初のフルカウル車となったわけですが、そのためか振動や衝撃に対する考えがまだ未発達の上、材質がABSであるために年式による劣化、走行による振動、ボルト締め込みによる負荷等で、そのボルト穴を中心にクラック(ヒビ)や割れが生じてきます。主にアッパーカウルとセンターカウルの継ぎ目、テールカウルのシートレール両側を止めるボルト穴等が脆い様です。

 

【対策】

 ボロであろうと極上であろうと、とにかくKRの車体を入手したらまず一度外装を全て外し、市販のOリングや塩ビ系ワッシャー等を可能である全てのカウル取付穴とボルトの頭部分に介して、締め付けトルクや走行振動が直接カウル穴部分に伝わらないようにします。

 既に入ってしまっているクラックについては市販のカウルリペア材で埋めるなどして、それ以上クラックが広がらないよう対処します。

 

【対策】(おまけ)

各カウル類の取付ツメ穴のゴムブッシュは常に新品を用意し、ヘタったり硬化ひび割れしたりちぎれたりしたらすぐに交換しましょう。そのまま使用してるとツメが甘くなって外装が落下したり(例・サイドカバー。落下すると自分のリアタイヤで踏み割ります)してしまいます。大切な外装に比べたらゴムブッシュなど、安い物。これもまた、中古車体購入後の儀式の一つとして考えるべきです。

 

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【初期・S型】始動不能・始動不良時に考えられる原因(この他にも他車種と同様の原因等いくらでもあります)
【調査報告:九州支部長・下川正行(全国単車番長連合・生番長)】

 ダイオード不良によるエンジンの始動不可

 初期・S型ならカウル左側、KR1ならタンクの下にあるダイオードがサイドスタンド・ニュートラル・クラッチswを統御しています。これが壊れるとエンジンは全くかからなくなります。ヒューズ等が大丈夫なのに点火する気配無き場合はダイオードもチェックしてみましょう。ダイオードは\1300位で買えるのでスペアを持ち歩いてもよいでしょう。

 

 エキサイタコイル(低速側)の不良による始動不能

 一般名称ではステータコイルとも呼ばれます。これが寿命などで機能しなくなると低回転で火花が飛ばなくなります。例えばこれをシャーシダイナモ上でギヤを入れて無理矢理後輪を回すと4000rpm位からスパークして普通にエンジンが回る事があるのは、おそらく不良コイルが高回転では機能しているのでしょう。このトラブルは素人目に気付きにくいでしょう。原因は文頭に述べたとおり寿命ですがあるいは左側に倒す回数が多ければ傷みやすくなるかもしれません。また、ステータコイルは車体NOの2000番台位で変更されています。パーツカタログの部品図柄とサービスマニュアル3-11『ウオーターポンプの分解』の写真を見ればその違いが判りますが、古いコイルは一箇所だけ線が巻かれず芯剥き出し状態、変更後のコイルは全ての芯に線が巻かれています。すなわち途中で設計変更があったというからには前のコイルに壊れやすいと言う問題があったに他ならず、調べてみるべきです。

 

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【初期・S型】タコメータの故障(情報求ム!)

 

★症状★

 エンジンを吹かしてもタコメーターが動かない。なぜかライトを点灯すると、申し訳なさそうに数千回転まで、ゆっくりと上がる。バッテリー・イグニッション・コード・CDI・レギュレーター・タコメーターを順に交換してもメーターは動かない。

 

★対策★ 

タコメータ本体を交換します。

 

★原因★

 現在を以てその原因は不明、調査中です。

 …それにしても初期KRのタコは壊れやすい様です。KROG会長本人も過去に三個壊れており、家にはタコメータのみ抜けた中古メーターASSYばかり転がっている始末です。

 そこで、会長として提案があります。

 誰かタコメータ本体をバラして直した、または線の焼き付きなどトラブルの箇所を発見された方はいませんか?

 あわよくば、バラして直してみませんか?

 ひょっとしたら部品単位で直せないワケでもなさそうな気がするのです。もちろん、動かなくなったメータを捨てるくらいならバラしてやる、といったノリで構いません。

 提案その2。メータの製造元(不明、調査中)に持ち込んでアフターサービスにつけ込んで修理を依頼してみる。針の巻線等、特殊な部品でもそこならストックしてくれてるいかもしれません。

 この様な提案ばかりをするのには、それなりの理由があります。初期KRのタコのトラブルがあまりに多いので、このまま中古部品から新品からタコメータばかりを使い潰し続けていくと、そのうちリヤサスみたいにタコメータだけメーカー欠品ならぬ「世の中欠品」してしまうという懸念があるのです。どなたか壊れたメーターを捨てずにそのまま持っている方、チャレンジしてみて下さい。どうもこの壊れ方はなにか決定的な原因がある様な気がします。かつてサイドスタンドswがそうでした。

 憶測ですが、長年放置されたKRの車体はこのメータトラブルが出ている傾向が多いことから、電装系から入る突入電源ないし不安定な電圧がメータの電子部品を焼き付かせているケースもあるのかもしれません。

 それと蛇足までに、抵抗値によるメータの検査方法はマニュアルに記載があります。

 

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【初期・S型】Fホイールハヴ近辺からの鳴くような音

 

★症状★

 走り出して、ある一定の速度に達するとフロントホイールのハヴ(軸受)あたりから「ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥ」という鳴くような音が聞こえる。音はクラッチ操作・エンジン回転数・ブレーキ操作などとは連動しておらず、走行速度による音階の変化さほど見られない、殆ど一定した「ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥ」という音である。ただし一旦音が出始めるとかなり速度を落とさないと音は止まらない。音が止まってから発進すると音は消えているが、また一定速度を越えると音を出し始める。

 時速80km/hで音の発生が見られた車両は、その音が消えるのは時速40km/h位、時速20km/hで鳴音が発生する車両では、一旦停まるまで鳴音も止まらない。その他、寒い日の夜によく聞こえる。

 走行には全く支障が無く、しばらく走ったが音がひどくなるわけでもなければ何かトラブルが発生するわけでもない。

 

★原因★対策★

 まだ確証はありませんが、これはフロントのホイールハブにある、メーターギヤの取り出し辺りから発生している音ではないかと睨んでいます。この症状は、これまで筆者の所有してきた数台全ての車体に見られ、その度に心配になってフロントのハヴベアリングを交換するなどしているのですが、いつも少しの間は音は消えてもまた1000Kmも走れば出るようになってしまいます。

 これはおそらく、ベアリング交換直後はグリスアップされているので、原因が直接整備箇所と関係が無くとも新しいグリスが共鳴を抑えてくれているのでないかと思います。

 結論から先に述べますと、この音は単なる何かの共鳴であり、走行にも支障がないことから、大きな心配をする程でもないと思います。会長車なぞはこの音が出始めてから数万キロ走行してますしその間には峠に行けば筑波サーキットも走りましたし、最高速アタックも幾度となく行われています。

 実にKRのメーターの取り出し部分は、謎に包まれています。メーターギヤユニットの取付の際の噛み合わせ位置がはっきりしないし、きちん噛み合って入っていてもアクスルを締めていくと何かしっくり来ないし、少しでも間違った角度で取り付けてアクスルを締めようものなら…ホイールの回転が極端に重くなり、無理矢理回転させれば動くかもしれませんがまず熱を持って危険な状態となります。

 これら噛み合わせも、あるいは共鳴と関係しているのかもしれません。

 とりあえず、一度フロントのアクスルシャフト(ホイールとフォークを止めている棒)を外して、ベアリングの状態を指で確かめ問題があらば交換し(指でベアリングを回してみて少しでもゴリゴリ感が見られたら交換)、アクスルシャフトの摺動面とベアリング両側、メーターギヤ周りを徹底的にグリスアップし、納得のいくフィット感が出るまでホイールを何度でも組み直しましょう。その際、アクスルとフォークを仮締めしてから車体を立たせ、ホイールを空転させたりフォークを数回ボトムさせたりしてから本締めにかかる基本的な事も忘れてはなりません。

 もちろん本締めの後もホイールが普通に抵抗なく空転するかもチェックします。ここでもし回転に異常な抵抗がある場合は左右ブレーキキャリパー本体を外して空転させ、原因を調べます。

 これら一連のメンテナンスの後も尚、ホイールが抵抗無く回転するのに音が消えないのであれば、それはそれで放っておきましょう。音自体はいつまでたっても気になりますが、実際に走行に支障はありません。

 

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【初期・S】KR長期保存の極意

 

 まず、車体からガソリンを全て抜き出してタンクを外します。外したタンクは燃料コックを外し、中をカラカラに乾かして室内保存します。蓋は開けたままで、ホコリが入らないようにひっくり返して保管しましょう。外したコック本体は、できればこれもバラして乾かして保存したいのですがそうするとまた組むときにパッキン類が必要なので(KRの純正部品はコックの部品ごとでないとパッキン類が取り寄せられない場合がある為)タンクと切り離したのみで本体通路にエアを通しておけば良いと思います。とにかくタンクもコックも、水気、つまりガソリンっ気を一切無くすことです。

 次にキャブレターを外して分解、フロート内を拭いてこれも家の中で保存します。キャブを外すことによって開いたエンジンのポート入り口は、丁度タンクブラケットの丸ゴムが同じサイズなのでこれをを押し込んで厚手のポリ袋で被せキャブを止めていたバンドで再び絞め込みます。チャンバーの出口にもゴム栓をします。ゴム栓はコルクでも何でも、DIY等で売っている各種サイズを取り揃えておくと良いでしょう。

 バッテリーも外して家の中で保存します。エアクリーナのエレメントも外して室内保管して下さい。エレメントは外気に晒されている期間が長いと劣化してボロボロになります。気付かずにエンジンを始動させた際に、それを吸い込んでしまうのが一番危険です。

 長期放置が予想される場合は、クラッチレバーは紐で引いたままにしておいて、エンジンは月に一回は十数回キックしておいて下さい。(その際はゴム栓を一時的に外す)十メートル位を押し掛けしてクランクを回転させておくのも良。いずれもピストンやクラッチ板の固着を防ぐためです。クラッチレバーの固定はクラッチワイヤーとスプリングが若干痛みますが、板が張付いて使用不能になるよりはマシです。一月に一回はこれらクランキングが必要です。

 形がついて直らなくなるのでタイヤの空気圧の抜けた状態での放置は避けて下さい。

 総じて、バイクを放置している人がたったこれらだけでも作業してさえいれば、世の中の放置バイクは再生率100%だと思います。KRだっていくらでも台数は減らないはずです。

 

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【初期・S型】タンデムツインエンジン脱着の極意

 

 初期及びS型のタンデムツインエンジンを外すには、リアサブフレーム・前後チャンバー・キャブ・各種ワイヤ・電装コードを外してください。エンジン底面中央のニュートラルセンサーも忘れずに。ニュートラルセンサーは前チャンバーを外せば届きます。シリンダーヘッド・シリンダーも外してください。それでも、一人ではなかなか難しいと思います。リアサスは外さなくても大丈夫です。

 KRのタンデムツインエンジンを載せ換える場合は、クランクケースを車体に乗せるつもりで行きましょう。そうすれば、一人で何とかなるでしょう。ヘッドやシリンダーを外すことによって、エンジンの軽量化?が図れます。ついでにクラッチ・ウォーターポンプ等も外しましょう。なぜならば、素のクランクケースに近ければ近いほど、作業しやすいからです。また、カバー等に傷をつける心配も軽減されます。どうせオーバーホールするのであれば、補器類は、外してしまった方がグッドです。きちんと準備して一気に乗せるのが、コツです。

[情報提供/副長・外道近岡様]

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 【各種】KRに触る前に必ず読め! 整備ミス事例 

 

 

【初期・S】タンデムツインエンジンの脱着について

 ニュートラルセンサーSWはエンジン底面中央に位置する為、脱着の際エンジンを地面に直置きすると必ずと言って良いほど痛み、プラグ本体と真鍮製の芯の間からオイル漏れを起こします。エンジンを脱着する際はあらかじめオイルを抜いてこのスイッチプラグを取り外しておきましょう。プラグは、アンダーカウルと下側(前側)チャンバーを外せば手が入ります。

 

 

【初期・S】フロントホイール取付時の注意

 タイヤ・ディスク交換等の作業の後にフロントホイールを左右フォークに取り付ける際は、ハブ部メーターギヤのユニットがきちんとした角度で取付けられていることを確認して下さい。実にKRのメーターの取り出し部分は謎に包まれています。メーターギヤユニットの取付の際の噛み合わせ位置が判りづらく、きちん噛み合って入ったとしてもアクスルを締めていくと何かしっくり来なく、少しでも間違った角度で取付けてアクスルを締めようものなら…ホイールの回転が極端に重くなり、無理矢理回転させれば動くかもしれませんがまず熱を持って危険な状態となります。

 納得のいくフィット感が出るまでホイールを何度でも組み直しましょう。その際、アクスルとフォークを仮締めしてから車体を立たせ、ホイールを空転させたりフォークを数回伸縮させたりしてから本締めにかかる基本的な事を忘れてはなりません。

 もちろん本締めの後もホイールが普通に抵抗なく空転するかもチェックします。ここでもし回転に異常な抵抗がある場合は左右ブレーキキャリパー本体を外して空転させ、抵抗の原因を調べます。

 

 

【初期・S型】燃料計コネクタの焼失

 整備ミスというより、中古や前ユーザーの段階で既に焼けて無くなっている車体が多いようです。要は設計不良です。燃料計コネクタはタンク下後部のあたりにメインハーネスから短めに伸びていますが(これとタンクからの燃料計センサーが繋がる)、ハーネスの通り道や配線の枝分かれの向き的に見ても、非常に後ろシリンダーとチャンバーに接触しやすくなっています。まだ配線が溶けずに残っているKRはタンク取付の際コネクタが後ろシリンダーに近付かない様、位置と向きに十分注意しするようにして下さい。

 既に溶けてしまっている場合、または残っているがどうも配線が死んでいる場合は、直接自分で配線を引いて作ってしまいます。

 まず、焼け残った配線は絶縁処理を施した後にハーネスに縛り付けておきましょう。コネクタの作り方は簡単で、市販の2極カプラーをDIY(ホームセンター)等で買ってきて、黄色/白線をメーター側から、黒/黄線をバッテリーのマイナス端子もしくはアースから引っ張ってきてそれぞれ2極のカプラーに繋げます。タンク側も同様に2極カプラーを取り付けます。完成後はスパイラルチューブや配線チューブ(黒)等市販品でメーターから引っ張ってきた黄/白ケーブルを保護し、コネクタの根元もビニールテープで水が入らないように絶縁しておきます。コネクタは普段キャブレタの上辺りで抜き差し出来るように取り回すと良いでしょう。

 

 

【初期・S】車体に取付けたままキャブレターを分解する時の注意

 外したフロートカバーのネジ、ジェット類、フロート関係部品等の細かい部品がすぐ下に位置するインシュレーターの穴に落ちない様に気を付けましょう。この穴に入ってしまうと右エンジンカバーを取らないと取り出せません。一番危険なのはそれに気付かなくてエンジンをかけてしまう事で、ネジはロータリーディスクに噛み込んでディスクを割ったりクランクに入ってしまう場合もあります。(フロートカバーのネジが足りなくなったキックが時々引っ掛かったその後片肺になったりしたらその可能性大)

 横着しないできちんとワイヤー類、燃料ホース類を外してキャブ本体を取り外してから分解するか、どうしても車体と繋げたまま分解する場合はキャブ本体をインシュレーターから外したらすぐインシュレーターの穴をガムテープで目貼りしてから作業にかかりましょう。

 

 

【全般】キャブレター分解時、フロートピンを抜こうとして…

 キャブレターのフロートピンを抜く際、硬く入ったピンを抜こうして無理な力を加え、ブリッジごと折ってしまうという失敗を何人もがやっています。ピンを支えるをブリッジは非常に脆いので充分注意して作業して下さい

 

 

【全般】キャブレター分解時、スロットルバルブ(及びワイヤ)の注意

 スロットバルヴーにワイヤーを組付ける際、片方の手でスプリングを圧縮しつつもう片方の手でスロットルワイヤの先(タイコ部)をつまみ出すのですが、その時、スプリングを弾いてスロットルホルダ(樹脂製・半透明)を飛ばさないように注意して下さい。スプリングの圧力なので指が外れたが最後、何処に飛んでいったのか見当もつかなくなります。こういったつまらないミスで走れなくなる事のないよう、スロットルバルヴを外すときは常にホルダーの予備を用意しましょう。透明の袋の中で作業すると事故が未然に防げます。

 

 

【全般】キャブレターセッティング時の注意

 キャブレターニードルジェットのセッティングを行う際も、Eリング落下紛失を防ぐ為に予備を取り寄せてから作業すると共に作業は透明の袋の中で行って下さい。

 

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【初期・S型】部品注文に際しての注意

 2001年1月現在、カムダンパーシュー(49048-1051)を1台分6個注文すると、パーツNoのコード変更ということで品番13048-5001で注文され(パーツリスト見出しNoでいうとシュー49048×3+カム13048×1のセット)、結果的には品番13048-5001のセットが6箱(三台分)届くというトラブルが発生しました。

 このセット品番で注文する場合はKR1台につき必要個数は2個(2気筒だから二箱)でいいのです。

 原因は、カワサキのコード変更にあります。

 3分割バラバラになっていたシューの品番はなくなり、カムとシュー3個分が全部まとめてパックになった品番13048-5001になりました。にも係わらず数が6個で注文されるので、6個が6箱になり数万円の余分な出費となり、えらい高くつきます。

 もしもう頼んでしまった人は、注文品番が変更されていたら個数の変更もお忘れなく。また、届いた品物を箱を開けて確認しましょう。

 これから注文される方はカムとシュー3個分が全部まとめてパックになった品番13048-5001を一台分2箱で注文しましょう。

 尚、このセット品番に入っているシューとカムは、初期生産の頃のKRのものとは形状が変わっている模様です。

 コード変更された注文品番は当然ながらパーツリストには追記されません(再版されていてもそのままの場合もあります)

 メーカー・カワサキは部品が無くなりそうになるとその近辺の部品をまとめてコード変更を行う悪癖がある様です。ゲームソフトで言えばドラクエ3とたけしの挑戦状を抱き合わせ販売するようなもんです。あるいは、資産税の問題かも知れません。

 ですので今後、この様な注文コード変更によるトラブルが増えると思われます。

 店頭では注文した品物の数を受け取る前に必ず確認し、不必要に多ければ支払う前に突き返しましょう。

 

【情報提供/KROG-ML高木様】

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